夢なのか現実だったのか、
それすらも曖昧で、
しあわせという言葉の意味が、
何故かひどくかなしく響く。
どうしてだろう、
なにかを忘れてきた気がするんだ。
でもなんなのか、
それがなんなのか、
わからないんだ。
何処かにあるんだろうか、
まだ何処かにあるんだろうか、
けれど何処へ行けばいいのか、
わからなくておれはずっと途方に暮れてる。
あのきんいろのひかりと、あの空の色。
どうしてこんなにも、
くるしくなるんだろう。
夢なのか現実だったのか、
それすらも曖昧で、
しあわせという言葉の意味が、
何故かひどくかなしく響く。
どうしてだろう、
なにかを忘れてきた気がするんだ。
でもなんなのか、
それがなんなのか、
わからないんだ。
何処かにあるんだろうか、
まだ何処かにあるんだろうか、
けれど何処へ行けばいいのか、
わからなくておれはずっと途方に暮れてる。
あのきんいろのひかりと、あの空の色。
どうしてこんなにも、
くるしくなるんだろう。
雑踏の中、―――そう、見知らぬひとたちが行き交う、その中に居る。ゆめ。そう、これはゆめ。ゆめのなかで、おれだけが立ち止まり、人の流れに眼を凝らす。
だけどどうして、
そんな風に立ち止まってしまうのかわからない。
けれど確かに、
なにかを探している。そんな気がする。ゆめを、―――夢をみているって知っている。わかっている。けれど。
それがなんなのかわからない。
なにを? ―――なにを?
おれは、・・・・・・ねぇ? 探している気がする。夢のなかで探しているずっと、
なにを? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰れを?
〈fragment〉
時折過る、音の欠片。
きんいろのひかりのなか、佇む華奢な背中。
胸が、くるしくなる。でも、
〈fragment〉
再生される旋律。
それをうたう、その声の主は、不意に振り向き、
泣きそうな顔をして笑った。
心臓が痛くなる。手を伸ばしたいのに動けない。
きんいろのひかり。あまりにもその姿が綺麗すぎて儚すぎて。動けないんだだ。
だけどこれが、
誰れの記憶なのか、あれは誰れなのか、
わからない。
〈fragment〉
震える背中、
ほろほろと落ちる雫。
さよなら。って、その声だけがやけに鮮明で、さよなら。って、その言葉がばらばらに砕けて散った。さよなら。の破片は、胸の奥に刺さったままだ。
ゆめをみてた。
焦燥感が残っている。
起き上がって両手をじっと見た。
なんだろう、
なにかを掴みたかった。そう、おれはなにかを掴みたかった。けれど、
届かなかった。あれは、
・・・・・・・・・・・・なんのゆめだったか忘れたけど。あれは、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだったのかなぁ、
胸の奥で花が揺らめく。
―――【 】が尋ねる。心底不思議そうにぼくに問う。
胸の奥で花が震える。
ああ、こんなにもぼくの躰には花がみっしりと根を張っているのに。
ああ、こんなにもぼくの心は果てしなく空虚なんだ。
花たちはほろほろと花弁を散らす。それは涙のようにはらりはらりと足許に零れる。
―――【 】が尋ねる。心底不思議そうにぼくを眺める。
もう、いいんだ。もう、終わらせたんだ。なのに、
――――――――――――なのに、―――――――――――――――どうして?
〈暗転〉
諦めるとか、
忘れるとか、
どうやったらできるんだっけ。
あの日から毎日を、日常を繰り返してきたくせに、
昨日までと明日からの、
区切り方がわからないんだ。
予定を分刻みで詰め込んで、
楽しいと思い込んで笑って燥いで、
くたくたになって泥の様に眠りに落ちても、
明け方に見る、淡い陽炎みたいな夢の欠片。
曖昧な、形にすらなっていない揺らぐそのカケラが、
頭の片隅にこびりついたまま拭えない。
ふとした瞬間に、
気配を感じて。
空白の刹那に、
過るなにかを、
全身全霊で、気配や色や音やにおいを、
探している。自覚のないまま。
未練。
きっとそうなんだろうでも、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・手を離せば楽になれるんだと、確かにあのときはそう思ったんだ。
頷いた、その顔を見ることができなかった。
ぼくは、
俯いたまま、背を向けたまま、
ドアが閉まる音を、全身で聴いた。
ドアが閉じる。それは、
終わりの音。
あれからぼくはずっと、
世界から遮断されているような気持ちでいる。
ずっと、
ずぅっと、ぼくは、
ぼくは見えない膜に包まれていて、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・息ができないんだ。