壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【欠けてるんだ、】3

夢なのか現実だったのか、 それすらも曖昧で、 しあわせという言葉の意味が、 何故かひどくかなしく響く。 どうしてだろう、 なにかを忘れてきた気がするんだ。 でもなんなのか、 それがなんなのか、 わからないんだ。 何処かにあるんだろうか、 まだ何処か…

【欠けてるんだ、】2

雑踏の中、―――そう、見知らぬひとたちが行き交う、その中に居る。ゆめ。そう、これはゆめ。ゆめのなかで、おれだけが立ち止まり、人の流れに眼を凝らす。 だけどどうして、 そんな風に立ち止まってしまうのかわからない。 けれど確かに、 なにかを探している…

【欠けてるんだ、】1

ゆめをみてた。 焦燥感が残っている。 起き上がって両手をじっと見た。 なんだろう、 なにかを掴みたかった。そう、おれはなにかを掴みたかった。けれど、 届かなかった。あれは、 ・・・・・・・・・・・・なんのゆめだったか忘れたけど。あれは、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

〈暗転〉

胸の奥で花が揺らめく。 ―――【 】が尋ねる。心底不思議そうにぼくに問う。 胸の奥で花が震える。 ああ、こんなにもぼくの躰には花がみっしりと根を張っているのに。 ああ、こんなにもぼくの心は果てしなく空虚なんだ。 花たちはほろほろと花弁を散らす。それ…

【疲れたなあ】3

くるしい、 くるしい、 くるしい、 くるしい、 ・・・・・・・・・・・・だってまだこんなにも、 あなたの残滓がぼくの細胞ひとつひとつに沁みついている。 だってあなたはぼくの寄す処(よすが)だった。 美しかったあのセカイは色を失った。 ぼくはどうやって、 ことばを…

【疲れたなあ】2

諦めるとか、 忘れるとか、 どうやったらできるんだっけ。 あの日から毎日を、日常を繰り返してきたくせに、 昨日までと明日からの、 区切り方がわからないんだ。 予定を分刻みで詰め込んで、 楽しいと思い込んで笑って燥いで、 くたくたになって泥の様に眠…

【疲れたなあ】1

頷いた、その顔を見ることができなかった。 ぼくは、 俯いたまま、背を向けたまま、 ドアが閉まる音を、全身で聴いた。 ドアが閉じる。それは、 終わりの音。 あれからぼくはずっと、 世界から遮断されているような気持ちでいる。 ずっと、 ずぅっと、ぼくは…

【××× 5】

あなたの傍に居られるのなら、他のすべてを無くしてもかまわない。 それを罪だと云うのなら、それさえも呑みこんでしまおう。 実を結ばない花が咲く。――――――ねぇ? その儚いうつくしさを大切に思っている。 あなたが思っているよりもずっと、 冥い感情を知っ…

【××× 4】

【 】は、 はらはら零れる花びらを一枚指で掬い、―――喰んだ。 白い歯がさくりと花弁を噛み砕く。 甘い芳香が周囲を包む。 とくり、―――どくり、 躰の奥で鼓動する。胎動のごとく、鼓動する。 どくり、―――とくり、 躰のなか、ああ、これは花だ。花が喜んでいる…

【××× 3】

―――――――――してください。 鈍色の言葉が霧散する。 ――――――――――――■■してください。 墨染の桜が煙る。 果てない夢の終焉をください。 ずっと、 ずっと、 世界の終わりを、待っている。 おねがい。 ―――――――――――――――■■してください。 ずっと、 おもっていたから。…