壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

心恋(うらごい);短編

【欠けてるんだ、】2

雑踏の中、―――そう、見知らぬひとたちが行き交う、その中に居る。ゆめ。そう、これはゆめ。ゆめのなかで、おれだけが立ち止まり、人の流れに眼を凝らす。 だけどどうして、 そんな風に立ち止まってしまうのかわからない。 けれど確かに、 なにかを探している…

手のひらに月のゆめを、

あなたがいるこのせかいは、 あなたをしあわせにしていますか?「オマエはむずかしいこと、かんがえすぎや」 おれの問いにあなたはいつもそう云って笑う。 ああ、なんて綺麗な。「しあわせにきまっとるやん」 ふわりと、 ああなんて綺麗な、美しい笑顔。 な…

ウツクシイモノ

あのひとは、笑う。柔らかく、優しく。 ゆっくりと、すこし舌足らずに俺の名前を呼んで、そして困ったように、笑う。 あの日の、あの、 あの、彼は。 何処にも見あたらない。 彼は、笑う。柔らかく。静かに。周りとは違う、空気を纏って。孤独に。孤高に。俺…

カナシイヤサシイクルシイ

「だって無理でしょう?」 なんで?「なんで。って」 はは、へんやなぁ、おまえ。「へん?」 へんやろ。「俺が? ですか?」 うん。「変?」 だってしゃあないやろ? すきになってしもぉたんやろ? すきでいるしかないやん? ほかにどうしようもないやん、な…

純心

―――あんなぁ、 おおきな液晶画面から眼を離さないまま。ひとりごとの様に彼は話す。 ―――おれ、おかしいんよ。 手はキーボードを叩いている。 床に胡座をかいて座り膝の上に置いたキーボード。使い難そうに思うけれどそれがいつもの彼のスタイル。いつもと変…

心恋のこと

意味>>心恋(うらごい)> (「うら」は「こころ」の意) 心に恋しく思うさまである。また、何となく恋しく思うさまである。 ※コトバンクより それはそれとして← このシリーズ?に出てくる方言は 似非関西弁です。 使用方法が間違っている表現が多々あると思…

孤独な魚はなにをねがう、

曖昧な記憶。 なんだっけ、 時折、 不意に浮かび上がる画像。 残像。 なんやろぉな、 この、 キオク。 ・・・・・・記憶? ***** 綺麗な、 真っ白な、 鏡? やわらかな、きおく。 桜が、散る。 なんやったっけ、『狂い咲き』 そう、云ったんは。誰れやった? …