壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

【疲れたなあ】2

 

 諦めるとか、
 忘れるとか、
 どうやったらできるんだっけ。

  あの日から毎日を、日常を繰り返してきたくせに、
 昨日までと明日からの、
 区切り方がわからないんだ。
 
 予定を分刻みで詰め込んで、
 楽しいと思い込んで笑って燥いで、
 くたくたになって泥の様に眠りに落ちても、
 明け方に見る、淡い陽炎みたいな夢の欠片。
 曖昧な、形にすらなっていない揺らぐそのカケラが、
 頭の片隅にこびりついたまま拭えない。
 ふとした瞬間に、
 気配を感じて。
 空白の刹那に、
 過るなにかを、
 全身全霊で、気配や色や音やにおいを、
 探している。自覚のないまま。

 未練。
 きっとそうなんだろうでも、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・手を離せば楽になれるんだと、確かにあのときはそう思ったんだ。