壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

【ねえ誰れか、】2

 なんの冗談かと思った。それで思わず周囲を見回してしまった。どこかに隠しカメラでもあるのかと思って。
 でも見知った事務所の小会議室には、見慣れた物しか置いていなくて。そこに座る社長の表情も、帽子を目深にかぶって腕組みをしてどっかりと座っている計登さんも、そんな冗談を仕掛けるような空気なんて全く纏っていない。

「今後のことを決めないといけない」

 招集がかかった。事務所の会議室。社長にそう云われた。その言葉の意味。4人いる《eternal》のうち、ここにいるのはふたり。僕と計登さんのふたりだ。・・・・・・時雨さんと十蒼(とおあ)さんは、いない。

「今後のことを決めないといけない」

『あのこと』があって、一ヶ月が経った。幸い、と云って良いんだろうな。いま僕らは、『あのこと』には関係無しの、少し長めの休暇中だから、―――だから、『あのこと』自体はまだ知られてはいない。事務所の社員にすら知られてはいない。
 デビューして、あることでブレイクしてからのここ数年めちゃくちゃに忙しかった。漸く、世間に忘れられたりはしないであろうくらいに名前と顔とが周知された僕ら《eternal》。ここらで少し休養しておこうか。そんな感じの、気軽なお休みだった筈なのに。

「今後のことを決めないといけない」

 呼び出された事務所の会議室で。社長にそう云われた。その言葉の意味。
 理解ができなかった。
 ・・・・・・違う、
 その意味なんてすぐに分かった。
 だけど、認めたくなかったんだ。
 だって僕たちは、【永遠】だった筈でしょう?
 なのに、

『無期限活動休止』―――『活動休止』そんなことを僕たちが? 《eternal》が? 『無期限』の? あり得ない。信じたくない。だって、―――だって、・・・・・・ああ、でも、そうか、そうだよね。その、あり得ないことがいま、おきているんだ。