【 】は、
はらはら零れる花びらを一枚指で掬い、―――喰んだ。
白い歯がさくりと花弁を噛み砕く。
甘い芳香が周囲を包む。
とくり、―――どくり、
躰の奥で鼓動する。胎動のごとく、鼓動する。
どくり、―――とくり、
躰のなか、ああ、これは花だ。花が喜んでいる。ぼくの心を蝕んでいる花が咲き誇る。
溶ける。―――溶ける。
躰が震えた。ずっと、望んでいる。ずっと願っているんだ。
望みが、欲望が、溢れ出す。花が咲きこぼれる。苦しい。苦しいんだ。
漆黒の虚無を見つめる。
静かに凪いでいるその瞳に映るぼくのこころは醜い欲望での汚泥に塗れている。
花はこんなにも美しく、咲いているのに。
――――――【 】が、ぼくに尋ねた。
ぼくは口を開く。花がほら、溢れて零れて、窒息しそうだ。
惹かれてやまない。もどかしい慕情、情欲。
罪悪感すらあまりにも甘い。この躰を蝕む支配する。
それでも欲しいと願ってしまった。その罪さえも呑みこんでしまおう。
それであのひとが傍に居てくれるのなら、他のすべてを捨ててもいい。
――――――【 】が、ぼくに尋ねた。
ぼくは口を開く。花を吐きながら、希う。
これであのひとが傍に居てくれるのなら、他になにもいらない。
――――――【 】が、・・・・・・嗤った。