壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

[S/2]

空が青いと思い知ったのは夜衣(よい)が吐いた煙草の煙を眼で追いかけたときだった。
 ビルの屋上で吹きっさらしの真冬の澄んだ空を見て、セカイは美しいんだなって、理解した。
 白く淡い煙草の煙が、青く鮮やかな空にとけていく。あの日―――そう、あの日あの瞬間まで、ぼくらは―――
 ぼくらはふたりきりだった。
 ぼくらはひとりきりだった。
 ぼくらはふたりで、ひとつだった。
 ぼくらのせかいは、ふたりでひとつで、完結していたのに。