壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

cry for the moon【交錯】/3

 ・・・・・・天使が居るのよ。

 そう云って、寂しそうに微笑む彼女。
 ・・・・・・そうだいつだって彼女は寂しそうに笑っていた。
「・・・・・・天使、」
 声に出ていたらしい、少年の視線がまた俺に向いていた。
 訊いてみようか。
 駄目で元々。少しでもなにか掠れば。
「この女を、見たことは無いか?」
 ポケットから取り出して写真を見せる。
 少年がそれを受け取り、ちょっと首を傾げた。
「・・・・・・・・・・・・、」
 沈黙が酷く重い。
 鴉がばさりと、何処かで羽ばたいた。