きれいなひとだね、」
長い沈黙の後、少年がそう云った。「お兄さんに似ている」
そう云われ、少し驚いた。
似ているなんて云われたことは無い。
俺は少年に向けた彼女の写真を見つめた。
そうか、似ているのか。
血の繋がりを思い、苦さが胸に広がる。
「・・・・・・姉だ、」
少年の反応を見て、はずれだったかとがっかりしながら答える。
「お姉さん。・・・・・・そう、・・・・・・」
少年は俺に写真を返す。
「お姉さんは、どうしたの? どっか行っちゃったの?」
「・・・・・・なんでそう思う?」
「だって、『見たこと無いか』だなんて訊くってことは。そういうことでしょう?」
「そうか・・・・・・そうだな、・・・・・・」
俺は写真を見つめ、またポケットに仕舞う。
羽音が聞こえる。ばさり、ばさりと。
この場所は、こんなに鴉が多かったか?
俺の心を読んだかのように、ヤツは「カァ」とまたひと鳴きした。
「見たことあるよ」
不意打ちの少年の言葉に、反射的に手が伸びてしまった。少年の肩を掴む。「見た?」
「痛いよ、」
少年が軽く顔を顰めた。
「見た? やっぱりそうか、お前だったのか」
少年の肩を掴み、勢い込みながら華奢な躰を揺さぶった。
「天使はお前だったのか。いつ? 最後に見たのはいつだ?」
と、刹那。背中が強張った。どうしたんだ。と自分に問いかける。
ちりちりと、項になにか・・・・・・なんだこれは。
なんだこの怖気は。
項が微弱な電気を帯びる。
その電流がぞぞぞと背筋を駆け降りた。
俺は少年の肩を掴んだまま、動けなくなる。
背後に、唐突に現れた気配。ぞわりと全身の産毛が立ち、腹の底が粟立つ。