そして少年は『良くあるハナシ』を語る。
・・・・・・近くも遠い国で、おんながひとり、捨てられた。と。
まるで飽きられた人形の様に、
まるで壊れてしまった玩具の様に、
無造作に、
廃棄されていた。と。
そんなことは日常茶飯事で、
そんなことは『ヨクアルハナシ』で、
そんなことは誰れも気にも留めない些末な事だと。
弱き者の末路。
救いはそこに無いのか、
弱き者は、救われはしないのか、
「ひとのいのちなんてとくべつなものじゃないよね」
あの少年は無邪気に、曇りの無い眼差しで、
そう微笑んで傍らに立つ『はる』の手を取った。
「・・・・・・・・・・・・よくある、はなし・・・・・・、」
ああ、・・・・・・ああ、そうなのか。
ひとのいのちは、そんなにも軽いものなのか。
俺が守りたいと思っていた彼女は、
俺を守るためにその身を闇に投じた。
例え取るに足らない命でも、
俺にとっては重く、大切だったのに。
だけどああほら既に「だった」なんて過去のものとしてしまっている。
救えない、
届かない、
闇の底は想像以上に冥く深く底無しだ。