壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

手のひらに月のゆめを、


あなたがいるこのせかいは、
 あなたをしあわせにしていますか?
「オマエはむずかしいこと、かんがえすぎや」
 おれの問いにあなたはいつもそう云って笑う。
 ああ、なんて綺麗な。
「しあわせにきまっとるやん」
 ふわりと、
 ああなんて綺麗な、美しい笑顔。
 なんでこのひとはこんなに綺麗なんやろ。
「アイツが居って、仕事もあって、すきなことができて、欲しいもんも買えて」
 こどもみたいに、指を折りながらそう云って、
「可愛い後輩も、居って」
 一旦言葉を切り、にっと口許を緩める。「オマエが、居るから」
 なぁ?
 そう云って首を反らして。俺を見上げる。
「だからおれはな、」
 しあわあせなんよ。
 無邪気な笑顔を向けられて、俺はなんでか、眼を逸らしてしまった。
 カーテンを開けっぱなしの窓から、
 まぁるい、月が覗いていた。
 俺らが居るこの世界は、
 特殊で厳しくて汚くて偽りと嘘ばかりでたまに逃げ出したくなるけど。
 このひとが、
 あまりにもこの世界には異質なこのひとが、
 しあわせだとそう云うのなら、
「兄さん。月が綺麗です」

「・・・・・・・・・・・・ああ、ほんまやなぁ」
 あなたがそうやって笑っていられるのなら、

 このせかいも悪くはない。
 あなたが笑う。このせかいに居られて。しあわせだと、俺も思う。
 

ないとめあ

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眠りたくないんだ。
「どうして」
 ゆめをみるんだ。
「どんな」


 眠りたくないんだ。
 だってあんなの嘘だから。
 おまえがおれをすきだなんて。
 おれがおまえをすきだなんて。嘘だ。

 泣きたくなる。眼が覚めたときの焦燥消失。
 だって、
 そのぬくもりが未だここにある気がして。
 泣きたくなるからさ、

 気付きたくなかった。
 認めたくなかったのに。
 ゆめなのに、

 しあわせだ。なんて。
 こんなにもしあわせで。こんなにも。
 かなしい。

落果

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おちたんだ。おちつづけているんだ。

*****

冷たい指先が、
ぼくの頬にそっと触れる。

哀しそうに、
微笑んで。
なにか云わなきゃ。
焦るばかりで。ぼくは。
こんなに近くに居るのに。
こうして触れているのに。
指先ひとつ、動かすことも出来ずに。
ただ、
うつむいた。
□□なんだ。
そのひとことが、口に出来ずに。
あなたの指が、離れていくのを感じて。
苦しいんだ。
どうして。
苦しいんだ。
息が出来ない。
顔をあげた。
あなたの後姿が。にじんで見える。
下げたままの手を。
そのまま、硬く握って。
深く、
深く、
息を吸って。
叫んでも。
ことばに、ならない。
行かないで。
□□なんだ。
苦しいんだ。
他にはなにも、欲しくは無い。
世界が壊れても。
世界が終わっても。
あなただけが、居てくれたらいいのに。
行かないで。
此処に居て。
ことばにならない。
タマシイだけが、叫んで居る。
ぼくはただ。
ひとり、
立ち尽くしていた。

*****

けれど。
うたうことをやめたぼくは、
なにも無い。
空虚なんだ。

*****

「すきですよ」
あなたが微笑む。
やわらかいコトバ。
なんどでも、繰り返す。
「あなたを、すきです」
はじめて、
悔やんだ。
うたを、うたっていること。
うたうことしかできない、自分を。

*****

恋なんて、知らないくせに。
愛のうたを、うたってきた。

*****

せつないよくるしいよさけびたいのにこえがでない。

さがしてる。
ねえ、
どうして。
いないのはわかっているのに。
もう、
あなたは、
くるしいよかなしいよなきたいのに。
どうしてわらっているの? ぼくは。
ねえ、
あいのうたなんて。
あなたに届かないのに。
なんて空虚な。
うたなんて。

*****

けれどぼくはうたうことしかできないんだ。

*****

真夜中に眼が覚める。
夢をみるんだ。
暗闇の中で、
声もなく、
泣いているんだ。
声が聞きたい。
逢えなくても。
消せないアドレス。あなたの名前。
ねえ、
どうしてこんなに。
あなたしか、欲しくないのに。

ウツクシイモノ

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あのひとは、笑う。
柔らかく、優しく。

ゆっくりと、すこし舌足らずに俺の名前を呼んで、
そして困ったように、
笑う。

あの日の、
あの、

あの、彼は。

何処にも見あたらない。
 
彼は、笑う。
柔らかく。
静かに。
周りとは違う、空気を纏って。
孤独に。
孤高に。
俺は気がつくと。
彼を追っている。
眼で。
耳で。
細胞の、ひとつひとつで。
彼の静謐な気配を、さがす。追う。
彼の、
あの日の彼を。
何処かに探す。

カナシイヤサシイクルシイ

 

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「だって無理でしょう?」

 なんで?
「なんで。って」
 はは、へんやなぁ、おまえ。
「へん?」
 へんやろ。
「俺が? ですか?」
 うん。
「変?」

 だってしゃあないやろ? すきになってしもぉたんやろ? すきでいるしかないやん?
 ほかにどうしようもないやん、なにがむりなん? おれにしてみればむりいうことがわからん。
「だって、」

「だって、男同士ですやん」

 うん? うん、だから、しゃあないやん? すきになってしもぉたんやろ?
「はい」
 じゃあ、すきでいるしなないやん? ほかにどうしようもないやん?
 
「すきってそぉいうことやろ?」

 あっけらかんと。
 真っ直ぐな瞳が俺を捉えて放さない。
 柔らかく微笑んで。そうだあなたは、
 この世のあらゆるすべてを受け入れてそのすべてに興味が無いのに。

「俺のことなんか興味も無いくせに」
 あなたの優しさは、

 かなしいんですよ―――

表記問題

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云われてみればそうかと思ったし

反論する理由もないので

 

NL表記問題ですね

 

反論する理由がないので(2度云いますが)

 

 

ココでは男女CPのモノガタリ

【DJ】と表記します

 

これって統一表記ありますの?

 

 

 

 

 

 

 

De Nachtmerrie

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幾多もの視線に晒されて。
晒されて。曝されて。
ああ、じゃあぼくはどんな表情で笑えばいいの。

誰れが味方で誰れが敵?
どれが嘘でどれが真実?

ぼくが語った言葉はすべて、
いつの間にか違う意味を持つ。

こわくてこわくてこわいけれど、

立ち止まるなんてできないんだ。

虚像が実像を覆い隠して、
皆が視ているこのぼくは誰れなんだろう。

虚像が実像を押し潰して、
皆がつくりり上げたそうこれがぼくの実像になっていく。

誰れがぼくを知っているというんだ、
ぼくは誰れを信じているというんだ、