壱色ノ匣:ヒトイロノハコ

モノガタリ綴り

cry for the moon【交錯】/6

そして少年は『良くあるハナシ』を語る。 ・・・・・・近くも遠い国で、おんながひとり、捨てられた。と。 まるで飽きられた人形の様に、 まるで壊れてしまった玩具の様に、 無造作に、 廃棄されていた。と。 そんなことは日常茶飯事で、 そんなことは『ヨクアルハ…

cry for the moon【交錯】/5

はる、」 少年は慌てることなく、変わらない口調で俺の背後に呼びかけた。「このひとは『違う』。大丈夫」 少年がそう云った途端。ふ、っと気配が消える。 全身に汗が滲んでいた。なんだこれは。・・・・・・恐怖? 少年は、「お兄さん、」と、俺の手首を掴み、強…

cry for the moon【交錯】/4

きれいなひとだね、」 長い沈黙の後、少年がそう云った。「お兄さんに似ている」 そう云われ、少し驚いた。 似ているなんて云われたことは無い。 俺は少年に向けた彼女の写真を見つめた。 そうか、似ているのか。 血の繋がりを思い、苦さが胸に広がる。「・・・…

cry for the moon【交錯】/3

・・・・・・天使が居るのよ。 そう云って、寂しそうに微笑む彼女。 ・・・・・・そうだいつだって彼女は寂しそうに笑っていた。「・・・・・・天使、」 声に出ていたらしい、少年の視線がまた俺に向いていた。 訊いてみようか。 駄目で元々。少しでもなにか掠れば。「この女を…

cry for the moon【交錯】/2

「お兄さん?」 その声で我に返った。少年が心配そうに俺を見ていた。 どうしてか、俺は吸い寄せられる様に、少年にふらりと近づいた。 少年は、警戒するでもなく、ただ俺を見ている。 鴉が「かぁ」と一声だけ鳴いた。 一瞬空気が密度を増した気がした。何故…

cry for the moon【交錯】/1

あれはいつのことだったか。彼女が云っていた。それを不意に思い出した。 夕陽の残光に、その淡い金色の髪が煌めいている。 なんだか酷く非現実的な情景だった。だから思い出した。彼女がいつか云っていた、あの言葉を。 金色の光に縁取られた輪郭。まるでそ…

cry for the moon【交錯】/追憶

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ? 信じる?』 いつだったか、 『・・・・・・ほんとうよ? 黄昏のなかに天使をみたのよ』

手のひらに月のゆめを、

あなたがいるこのせかいは、 あなたをしあわせにしていますか?「オマエはむずかしいこと、かんがえすぎや」 おれの問いにあなたはいつもそう云って笑う。 ああ、なんて綺麗な。「しあわせにきまっとるやん」 ふわりと、 ああなんて綺麗な、美しい笑顔。 な…

ないとめあ

眠りたくないんだ。「どうして」 ゆめをみるんだ。「どんな」 眠りたくないんだ。 だってあんなの嘘だから。 おまえがおれをすきだなんて。 おれがおまえをすきだなんて。嘘だ。 泣きたくなる。眼が覚めたときの焦燥消失。 だって、 そのぬくもりが未だここ…

落果

おちたんだ。おちつづけているんだ。 ***** 冷たい指先が、ぼくの頬にそっと触れる。 哀しそうに、微笑んで。なにか云わなきゃ。焦るばかりで。ぼくは。こんなに近くに居るのに。こうして触れているのに。指先ひとつ、動かすことも出来ずに。ただ、うつ…

ウツクシイモノ

あのひとは、笑う。柔らかく、優しく。 ゆっくりと、すこし舌足らずに俺の名前を呼んで、そして困ったように、笑う。 あの日の、あの、 あの、彼は。 何処にも見あたらない。 彼は、笑う。柔らかく。静かに。周りとは違う、空気を纏って。孤独に。孤高に。俺…

カナシイヤサシイクルシイ

「だって無理でしょう?」 なんで?「なんで。って」 はは、へんやなぁ、おまえ。「へん?」 へんやろ。「俺が? ですか?」 うん。「変?」 だってしゃあないやろ? すきになってしもぉたんやろ? すきでいるしかないやん? ほかにどうしようもないやん、な…

表記問題

云われてみればそうかと思ったし 反論する理由もないので NL表記問題ですね 反論する理由がないので(2度云いますが) ココでは男女CPのモノガタリは 【DJ】と表記します これって統一表記ありますの?

De Nachtmerrie

幾多もの視線に晒されて。晒されて。曝されて。ああ、じゃあぼくはどんな表情で笑えばいいの。 誰れが味方で誰れが敵?どれが嘘でどれが真実? ぼくが語った言葉はすべて、いつの間にか違う意味を持つ。 こわくてこわくてこわいけれど、 立ち止まるなんてで…

廃楽園

うそつきだ。 世界は終わらなかった。 いつだってそうだ。 あいつを抱きしめて。 くちづける。なんどもなんども。 もういいじゃん。だれもなんにもいわないよ。 だからこうしてつながったままほらもうじきおわるんだってさ。せかいは、 おわるんだよ。 いま…

純心

―――あんなぁ、 おおきな液晶画面から眼を離さないまま。ひとりごとの様に彼は話す。 ―――おれ、おかしいんよ。 手はキーボードを叩いている。 床に胡座をかいて座り膝の上に置いたキーボード。使い難そうに思うけれどそれがいつもの彼のスタイル。いつもと変…

心恋のこと

意味>>心恋(うらごい)> (「うら」は「こころ」の意) 心に恋しく思うさまである。また、何となく恋しく思うさまである。 ※コトバンクより それはそれとして← このシリーズ?に出てくる方言は 似非関西弁です。 使用方法が間違っている表現が多々あると思…

孤独な魚はなにをねがう、

曖昧な記憶。 なんだっけ、 時折、 不意に浮かび上がる画像。 残像。 なんやろぉな、 この、 キオク。 ・・・・・・記憶? ***** 綺麗な、 真っ白な、 鏡? やわらかな、きおく。 桜が、散る。 なんやったっけ、『狂い咲き』 そう、云ったんは。誰れやった? …

花孕(説明)

※長編BLです 此処ではないセカイのモノガタリ ラノベ? ファンタジーセカイ 流血表現あり

何処かへ

見送った。電車。なんとなく、 ひとりになった。駅のホームはもの悲しい。 スマホを取りだして、呼び出したアドレス。 メールを打って、送信。そのまま画面を見つめていた、 莫迦だな。 嗤うこともできない。ためいきをひとつ。 酔っているのかも、しれない…

残像

ナイテイルノカト。 思うんだ。いつも。 静かな横顔。 うつくしいその貌に、時折。 ほんの少しだけ浮かぶ。表情。 泣くのかと。 その表情を見つける度に、 胸が痛くなる。 あのひとは、携帯をただ、みつめている。 ああ、ほら、また、 泣きそうで、 壊れそう…

カナシイ、しあわせ

この、こころを、 捨てた。だからもう、 恋なんて、 知らない。 「あいしてるよ」 優しい、微笑みをいつだって、 その口許に浮かべて。「すきだよ」 そう、いつだってあのひとは優しい。 だけど、 知っている。 あのひとは、 誰れも見ていない。 あのひとは…

はじめに

いつまで続くかわからないけれど 晒しても大丈夫な分野の 架空のモノガタリを綴っていきたいと思います